私の母は、父が亡くなった後も一人で生活をしていました。
バスに乗って出かけることもできましたし、
買い物や日常生活も特に問題なく過ごしていました。
そのため、私は母が認知症になるとは考えていませんでした。
当時から私は新宿で行政書士をしており、実家と新宿を行ったり来たりする生活をしていました。
金曜日の夜に実家へ帰り、土日を実家で過ごします。
そして月曜日の朝に新宿へ向かい、水曜日の夕方まで行政書士業務を行い、水曜日の夜に再び実家へ帰る。
家のことや母の様子を確認した後、木曜日の朝には再び新宿へ向かい、行政書士業務を行う。
そんな生活を何年も続けていました。
当時はそれが当たり前になっていましたが、今振り返るとよく続けていたなと思います。
しかし、父が亡くなってから数年後、母が風邪をひいたことをきっかけに状況が大きく変わりました。
風邪で体調が悪いだけでなく、何か様子がおかしい。
しかし、その原因が分かりませんでした。
そんな中、心配して母親の様子を見にきてくれた近所の方から
「認知症が進んでいるかもしれない」
と言われたのです。
私はその言葉を聞いて、はっとしました。
慌てて近所の病院へ連れて行き、認知症の検査を受けた結果、認知症と診断されました。
当時の私は、
「急に認知症になった」
と思いました。
しかし、後から振り返ると、実はその前から小さな変化は始まっていたのだと思います。
例えば、一人で出かけた帰りに途中で歩けなくなり、通りがかった方に助けてもらってタクシーを呼んでもらったことがありました。
携帯電話も持っていなかったため、周囲の方の助けがなければ帰宅できなかったかもしれません。
また、衣類の管理が以前よりできなくなっていました。
当時は、
「年齢のせいかな」
程度に考えていましたが、今思えば認知症のサインだったのかもしれません。
それでも私は気付きませんでした。
なぜなら、
「うちの母は大丈夫」
と思い込んでいたからです。
私は毎週のように実家へ通い、母の様子を見ていました。
それでも気付けなかったのです。
そして私は、認知症は特別な人だけがなるものではなく、誰にでも起こり得るものなのだと実感しました。
だからこそ、
「認知症にならないようにする」
だけではなく、
「認知症になる可能性もある」
という前提で考えておくことが大切なのだと思います。
また、家族だけで抱え込むのではなく、地域で見守ってくれる方の存在も非常に大切です。
私の場合も、近所の方の見守りに何度も助けられました。
もしあの時、母の様子を気に掛けてくださる方が周囲にいなければ、実家と新宿を行き来しながら仕事を続けることは難しかったと思います。
介護が始まってから考えるのではなく、
もしもの時に誰が見守ってくれるのか。
どこへ相談できるのか。
そうしたことを元気なうちから考えておくことは、本人だけでなく家族にとっても大きな助けになると思います。
また、離れて暮らしているご家族がいる場合には、帰省した際の小さな変化にも目を向けてみてください。
以前は普通にできていたことができなくなっている。
同じ話を何度も繰り返す。
衣類や持ち物の管理が難しくなっている。
家の中が以前より片付かなくなっている。
こうした変化は、年齢によるものと思ってしまいがちですが、認知症の初期症状である場合もあります。
もちろん、全てが認知症というわけではありません。
ただ、
「うちの親は大丈夫」
と思い込まず、
「もしかしたら何か変化が起きているかもしれない」
という視点を持つことは大切だと思います。
私自身、母の変化にもっと早く気付けていればと思うことがあります。
だからこそ、この経験が少しでも誰かの参考になれば幸いです。