以前の記事で、私の母が認知症になったときのことを書きました。
母は、父が亡くなった後も一人で生活をしていました。
一人でバスに乗って出かけることもできましたし、私は毎週のように実家へ帰って母の様子を見ていました。
そのため、どこかで、
「うちの母は大丈夫」
と思っていたのだと思います。
しかし、母が風邪をひいたことをきっかけに様子がおかしくなり、近所の方から、
「認知症が進んでいるかもしれない」
と言われ、初めて私は「認知症」という可能性を意識しました。
そして、そこで困ったのが、
「いったい、どこに相談すればいいのだろう?」
ということでした。
認知症かもしれない。でも、どこの病院へ行けばいい?
今なら、まず地域包括支援センターへ相談する、かかりつけ医へ相談するなど、いくつかの方法が思い浮かびます。
しかし、当時の私はそんなこともよく分かりませんでした。
母の様子がおかしい。
認知症かもしれない。
病院へ連れて行かなければ。
そう思っても、
「何科に行けばいいのか」
「どこの病院で診てもらえばいいのか」
すぐには分からなかったのです。
そこで地域包括支援センターに相談しました。
最初に案内されたのは、最寄りの大学病院でした。
ところが、「最寄り」といっても実家からはかなり距離がありました。
認知症の可能性がある高齢の母を連れて、そこまで通院を続けることを考えると、簡単なことではありません。
結局、近所のかかりつけ医に相談することになりました。
そこで認知症について診てもらい、その後、母が亡くなるまでお世話になりました。
振り返ってみると、近くに継続して診ていただける先生がいたことは、本当にありがたいことでした。
ケアマネジャーさんとの出会いにも助けられました
病院だけではありません。
介護が必要となれば、
「介護保険はどうすればいいのか」
「ヘルパーさんにはどうやって来てもらうのか」
「どんな介護サービスが利用できるのか」
など、今度は介護について分からないことが次々に出てきます。
私も、誰に相談したらいいのだろうと悩んでいました。
そんなとき、いつも利用していた床屋さんとの会話の中で、知り合いにケアマネジャーをしている方がいるという話になりました。
そこで、そのケアマネジャーさんを紹介してもらうことになりました。
この出会いには、本当に助けられました。
介護に必要なことを一つひとつ教えていただき、その後の介護サービスなどについても段取りを組んでもらうことができました。
私一人だったら、
「次は何をすればいいのだろう」
と、その都度調べながら進めなければならなかったと思います。
介護について分からない家族にとって、道筋を示してくれる方がいるということは、とても心強いことでした。
親が元気なうちは、介護の相談先まで考えない
今振り返って思うのは、高齢の親がいても、
「もし認知症になったら、どこに相談しよう」
ということまで考えている方は、意外と少ないのではないかということです。
私自身がそうでした。
親が普通に生活している間は、
「認知症になったら」
「介護が必要になったら」
ということを現実の問題として考えることは、なかなかありません。
ところが、実際にその時が来ると、家族は慌てます。
本人のことも心配です。
仕事や自分の生活もあります。
その状況で、
病院を探す。
介護制度について調べる。
相談先を探す。
必要な手続きをする。
これらを一から始めるのは、思っている以上に大変です。
だからこそ私は、親が元気なうちから、少なくとも「相談先」だけでも考えておくとよいのではないかと思っています。
元気なうちに「相談先」を確認しておく
例えば、
・認知症について相談できるかかりつけ医はいるか
・地域包括支援センターはどこにあるのか
・身近にケアマネジャーや介護関係の仕事をしている方はいないか
・いざというときに相談できる親族や知人はいるか
・近所で本人の様子を気に掛けてくれる方はいるか
こうしたことを、何となくでも把握しておくだけで違うと思います。
もちろん、介護が始まる前からケアマネジャーを決めておくという意味ではありません。
「何かあったとき、まずどこに相談すればいいのか」
その入口だけでも知っておくということです。
私の場合、地域包括支援センターへの相談もしましたが、最終的には近所のかかりつけ医や、床屋さんを通じて紹介してもらったケアマネジャーさんとのつながりに助けられました。
公的な相談窓口はもちろん大切です。
一方で、普段の人とのつながりが、思いがけないところで助けになることもあります。
家族だけで何とかしようとしない
母の介護を経験して感じたことの一つが、
介護を家族だけで何とかしようとしないこと
の大切さです。
病院の先生。
ケアマネジャーさん。
ヘルパーさん。
地域包括支援センター。
近所の方。
いろいろな人の力を借りながら介護を続けていくことになります。
私自身も、実家と新宿を行き来しながら母の介護をしていました。
介護を続けている中では、一時、新宿での仕事や生活をたたんで、実家に戻ろうかと考えたこともありました。
「このまま新宿と実家を行き来する生活を続けられるのだろうか」
「いっそのこと実家に戻った方がいいのではないか」
そんなことを考えていた時期がありました。
しかし、それを止めてくれたのは、ある知人との電話でのやり取りでした。
その方と話をする中で、介護のために自分の仕事や生活まで全部なくしてしまう必要はないのではないか、と考え直すことができました。
結果として私は、新宿で行政書士の仕事を続けながら、実家との行き来を続けることにしました。
もちろん、それが誰にとっても正しい選択だったとは思いません。
介護の状況も、家族の事情も、一人ひとり違います。
ただ、介護をしていると、
「自分が何とかしなければ」
「自分の生活を変えなければ」
と、どうしても視野が狭くなってしまうことがあります。
そんなとき、家族以外の誰かに話を聞いてもらうだけでも、自分では思いつかなかった選択肢が見えてくることがあります。
もし周囲の方々の助けがなければ、仕事を続けながら母の介護をすることは難しかったと思います。
「まだ元気だから」のときに少しだけ考えてみる
親が元気なときに、
「認知症になったときのことを考えておこう」
と言われても、なかなか実感が湧かないと思います。
私もそうでした。
だから、大げさな準備をする必要はないと思います。
まずは、
「親のかかりつけ医はどこだろう」
「地域包括支援センターはどこだろう」
「介護のことを相談できそうな人はいるだろうか」
そんなことを一度考えてみるだけでもよいのではないでしょうか。
そして、離れて暮らしている場合には、帰省したときなどに親の様子を少し気に掛けてみる。
以前と違うことがないか。
困っていることはないか。
近所に見守ってくれる人はいるか。
そうした小さな確認が、いざというときに家族を助けてくれるかもしれません。
私自身、母が認知症になって初めて分かったことがたくさんありました。
「あのとき知っていれば」
「もう少し前から考えておけば」
と思ったこともあります。
だからこそ、私自身の経験が、これから親の介護に向き合うかもしれない方にとって、少しでも参考になればと思っています。
※本記事は、私自身の母の介護経験をもとに書いたものです。認知症の症状や必要な医療・介護サービスは一人ひとり異なりますので、具体的な対応については医療機関や地域包括支援センターなどの専門機関へご相談ください。
