以前の記事で、**「相続財産調査(実務②)所有不動産記録証明制度による不動産調査」**ついてご紹介しました。
所有不動産記録証明制度は、亡くなられた方が所有者として登記されている不動産を調査する際に利用できる制度です。
しかし、実際に相続財産調査を行っていると、
「不動産があると聞いているのに、調査結果に出てこない」
ということがあります。
今回、実際に担当している相続手続でも、そのようなケースがありました。
調査を進めたところ、田・畑・山林など土地が、亡くなられた方ではなく、その父親名義のまま残っていることが分かりました。
今回は、このケースをもとに、不動産の相続財産調査を行う際に気を付けたいことをご紹介します。
※本記事は、実際に取り扱っている相続手続での経験をもとに、個人を特定できないよう内容を一般化してご紹介しています。
所有不動産記録証明制度で「あるはずの土地」が出てこない
今回の相続手続では、事前のお話などから、亡くなられた方に田畑などの不動産があると考えられていました。
そこで、所有不動産記録証明制度を利用して不動産の調査を行いました。
ところが、調査結果を確認しても、聞いていた田畑などが出てきません。
「あると聞いていた土地が、なぜ出てこないのだろう」
そこで、手元にある資料を改めて一つひとつ確認することにしました。
固定資産税関係の資料から土地を確認
資料を確認していくと、固定資産税に関する資料に土地の記載がありました。
そこで、その土地について登記情報を確認したところ、理由が分かりました。
登記名義人が、今回亡くなられた方ではなかったのです。
登記名義人となっていたのは、亡くなられた方の父親でした。
さらに資料や登記情報を確認していくと、田・畑・山林などの土地が父親名義のまま残っていることが確認できました。
つまり、今回亡くなられた方を所有者として調査しても確認することのできない不動産だったのです。
なぜ所有不動産記録証明制度で確認できなかったのか
今回、所有不動産記録証明制度でこれらの土地を確認できなかったのは、制度に問題があったわけではありません。
今回の調査では、亡くなられた方を所有者として不動産を調査していました。
しかし、登記上の所有者はその父親のままでした。
そのため、亡くなられた方を所有者として調査しても、父親名義となっている土地は確認できなかったわけです。
ここは、相続財産調査を行ううえで注意したいところです。
「所有不動産記録証明書に記載されていない」=「他に関係する不動産はない」
とは限りません。
例えば、
「以前、親から土地を相続したと聞いている」
「田畑や山林を持っていたはず」
といった情報があるにもかかわらず調査結果と一致しない場合には、別の資料についても確認してみる必要があります。
一代前の名義の不動産が見つかったら、相続関係の確認が必要
今回のように、亡くなられた方の父親など、一代前の方の名義のまま不動産が残っている場合には、今回亡くなられた方についてだけ相続関係を確認すればよいとは限りません。
まず、不動産の登記名義人である父親が亡くなった時点で、
「誰が相続人だったのか」
を確認する必要があります。
さらに、その相続人の中にその後亡くなられた方がいる場合には、その後の相続関係についても確認する必要が生じることがあります。
そのため、
・戸籍謄本等の収集
・相続人の確認
・相続関係の整理
・法定相続情報一覧図の作成
など、通常よりも調査範囲が広くなることがあります。
長期間にわたって名義がそのままになっている不動産の場合、その間に相続人が亡くなり、さらに次の相続が発生していることもあります。
そのため、古い名義の不動産が見つかった場合には、まず相続関係を丁寧に確認していくことが大切です。
なお、不動産の相続登記については司法書士の業務となります。
当事務所では、相続人や相続財産の調査、相続関係の整理、遺産分割協議書の作成などを行い、不動産の相続登記が必要となる場合には司法書士と連携して手続きを進めています。
不動産の相続財産調査は一つの資料だけで判断しない
今回のケースで改めて感じたのは、不動産の相続財産調査では、一つの資料だけを見て判断しないことの大切さです。
不動産について調査する際には、
・固定資産税納税通知書、課税明細書
・名寄帳
・所有不動産記録証明書
・登記事項証明書、登記情報
・権利証(登記済証・登記識別情報)
・ご自宅などに残されている不動産関係の資料
など、複数の資料を確認しながら、それぞれの内容が整合しているかを見ていくことが重要です。
今回も、
「田畑などの土地があると考えられる」
という情報と、所有不動産記録証明制度による調査結果が一致しなかったことから、手元の資料を改めて確認しました。
その結果、亡くなられた方の父親名義となっている土地を確認することができました。
もし一つの調査結果だけを見て、
「これで不動産は全部だろう」
と判断してしまえば、関係する不動産を見落としてしまう可能性があります。
相続財産調査では「情報と調査結果が一致しているか」も確認する
相続手続をしていると、ご家族から、
「山を持っていたと聞いたことがある」
「昔、親から田んぼを相続したはず」
「どこかに土地があると思う」
といったお話を伺うことがあります。
もちろん、こうした記憶やお話だけで不動産の存在を判断することはできません。
一方で、調査結果とご家族から聞いている情報が一致しないのであれば、
「なぜ一致しないのだろう」
と一度立ち止まって確認することも大切だと思います。
固定資産税関係の書類が残っていないか。
古い権利証などがないか。
登記名義がさらに前の世代のままになっていないか。
こうしたことを一つひとつ確認していくことで、別の不動産が判明することがあります。
まとめ
相続財産調査では、亡くなられた方名義の不動産を調査するだけでは十分でない場合があります。
特に、
「昔、親から土地を相続したと聞いている」
「田畑や山林を持っていたはずだが詳しいことが分からない」
「調査結果と家族から聞いていた話が一致しない」
といった場合には、現在の登記名義や、その他の資料についても確認することが大切です。
所有不動産記録証明制度は、不動産を調査するための有効な方法の一つです。
一方で、固定資産税関係の資料、名寄帳、登記情報、ご自宅に残された資料など、複数の情報を組み合わせて確認することも、相続財産の見落としを防ぐためには重要だと、今回の実務を通じて改めて感じました。
相続手続・相続財産調査でお困りの方へ
当事務所では、
・戸籍収集による相続人調査
・預貯金、有価証券、不動産などの相続財産調査
・法定相続情報一覧図の作成
・遺産分割協議書の作成
・金融機関等での相続手続
など、相続に関する各種手続きをサポートしております。
不動産の相続登記が必要となる場合には、司法書士と連携して対応いたします。
「相続財産がどこまであるのか分からない」
「亡くなった親族よりも前の世代の名義になっている土地が見つかった」
「何から調査すればよいのか分からない」
といった場合も、お気軽にご相談ください。
相続手続について詳しくは、「相続手続・遺産整理業務のご案内」をご覧ください。
